
ボクは次亜塩素酸水使ってます♪何にでも使えてコスパもいいんだぁ~
国が調べたら次亜塩素酸水はコロナに効果がないとか言ってただろ!
彼らのように、次亜塩素酸水は新型コロナウイルスに、効果があると言われていたような、効果がないと言われていたような……で、結局どっちだっけ?
という方は、多いのではないかな、と思います。
それもそのはず。
この混乱の原因は、経済産業省が「製品評価技術基盤機構(NITE)」に要請して作った「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会」での、次亜塩素酸水に関する検証結果が二転三転したことにあります。
この委員会で検証の対象になった第一弾の除菌剤は『特にコロナへの効果が見込めるから、早く検証しよう!』という群だったので、世間的にすごく注目が集まっていたんですよね。
さて、この委員会での検証の結果、多くの除菌剤が「効果あり」とされる中、「効果……ないかもしれない」となったのが他でもない『次亜塩素酸水』でした。当時はめちゃくちゃ報道されましたね。
しかし、その後も検証が重ねられたことを、いったいどれだけの人が知っているでしょうか?
そして、その幾度もの検証の結果、どういう結論に至ったのかも……
さて、今回の記事では
- 結局次亜塩素酸水はコロナに効くの?
- 結果が二転三転するなんて怪しくない?
- 次亜塩素酸水のあの使い方……実は効果ないの?
といったあなたの疑問に、次亜塩素酸水の化学的性質から徹底解説していきます!
医療施設での感染対策コンサルタントを6年間経験しました。
専門分野は「環境からの感染をいかに防止するか」で、医師~清掃員まで1000名超の指導経験があります。
日本の代表的な感染症学会『日本環境感染学会』で発表したことも。
正しい情報を求めるあなたの助けになれたら嬉しいです!
注意:本記事の論点について
次亜塩素酸水は世の中で広く使われている除菌剤です。
今回のお話はあくまでも『新型コロナウイルス』に対しての正しい使い方であり、他の目的に使用する場合は対象ではありません。
結論
ずばり「複数の条件を満たせば、新型コロナウイルスへの効果がある」です。
詳しくは事項から見ていきましょう!
NITEによる次亜塩素酸水 検証結果の変遷
【第1回】実はもうここで答えが出ている……
第1回の検討委員会では「まずどれから調べたら効率がいいと思う?」という議論が行われました。
当時は、世間がパニックになっていて、エタノールなどの一般的な消毒薬が手に入らなくなっていたのが課題でした。代替可能な除菌剤を国として提示することによって、消毒薬の供給回復を目指したんですね。
そこで、世の中に無数にある除菌剤を
- 効果がある可能性の高さ(文献・論文調査)
- 一般人の入手しやすさ
- 安価さ
の観点から列挙しました。
その結果「次亜塩素酸水」はこの基準をクリアし、無事検討対象に入った、ということになります。
さて、ここで注目してほしいのが、経産省及びNITEが公開している資料です。黄色い枠で囲ったところを読んでみてください。※以下、HPより抜粋したものを貼り付けます。
『次亜塩素酸水は手指消毒に推奨されない』
『次亜塩素酸水は一般家庭で使用するには注意が必要』とあります。
そう!すでに以下の点は疑問視されているのです!
- 手指消毒への使用はやめた方がいい
- 生成後の使用期間は限定的
- 使用方法によって効力にムラがあるかも
それでは、次の委員会ではどうでしょうか?
【第2回】インフルエンザウイルスでの検証:効果あり!
第2回の検討委員会では、新型コロナウイルスと似た構造(エンベロープをもっているRNAウイルス)のA型インフルエンザウイルスで各種除菌剤の効果を検証していました。
結果、次亜塩素酸水は、インフルエンザウイルスに対してはエタノールと同等の効果を発揮していることがわかりました。期待が持てますね!
【第3回】次亜塩素酸水の検証はありませんでした
【第4回】①新型コロナウイルスでの検証:効果にムラが
かなり効果にムラが出ています。効果を左右している条件は以下の通り。
- pH(酸性・アルカリ性のあれです)
- 有効塩素濃度(報告書内では『ACC』と記載されています)
- ウイルス液とどれくらいの割合で混ぜたか
よりしっかりと検証をするべきということとなり、結論は次回に持ち越しになりました。
【第4回】②ファクトシート「空間噴霧に効果なし」
そして、これと同時に経産省が公開したファクトシート「次亜塩素酸水の販売実績、空間噴霧について」が抜粋されニュースになることで、世間は大きく混乱することになります。
報道内容は、大きく2つの内容に分かれていました。
①「次亜塩素酸水の新型コロナウイルスへの有効性 確認されず」
②の話題性から、少し誇張された表現になった報道でした。報告書では「現時点では」という但し書きがついていたのですが、その文言が見出しに載ることはありませんでした。
②「次亜塩素酸水の空間噴霧に効果なし」
これについては誇張でも何でもなく、紛れもない事実です(2021年2月現在)。
これがなぜ世間を混乱させたかというと、多くのメーカーが「次亜塩素酸水を噴霧することで空間除菌(空中にいるウイルスの不活化)ができる」と宣伝していて、多くの人がそれを信じていたからです。
そして「次亜塩素酸水は嘘だったんだ」と多くの人が落胆しその騒動がすっかり落ち着いたころ、次の報告で最終的な検証結果が出たのです。
【第5回】次亜塩素酸水は条件付きで効果あり
これが最後の報告になりますが、あまり報道されなかったため、知らない人がかなり多い内容になっています。
さて、この『条件付き』の『条件』とは何か、下記にまとめました。
- 汚れ(手垢や皮脂など)をあらかじめ除去する事
- 充分な量を使用すること
- 電気分解・非電気分解性溶液は有効塩素濃度35ppm以上
- ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの場合は有効塩素濃度100ppm以上
なんか不安になってきた……
次亜塩素酸の化学的な性質を知ると、納得&安心できると思いますよ!
次亜塩素酸水の除菌・ウイルス抑制メカニズム
次亜塩素酸水が、どうして細菌やウイルスを懲らしめることができるのかというと、次亜塩素酸の「反応性の高さ」が大きな要因になっています。
反応性とは、他の物質を巻き込んで、自身の形を変えることです。
ここでは、次亜塩素酸水の反応性の高さがどこからきているのか、そして、その反応性の高さがもたらすメリットとデメリットを、化学的な性質からお伝えします。
まず、次亜塩素酸水の主な有効成分は『次亜塩素酸 HClO』です。
H:水素原子
Cl:塩素原子
O:酸素原子
この3つの原子によって構成される分子です。
さて、この次亜塩素酸。実はもとから少し無理のある構造をしているんです。
どういうことかというと『OとH』と『Cl』とで、あまり仲が良くないのです。
OとHは、二人だけで『OH-(水酸化物イオン)』という状態の方が居心地がいい。
Clは、一人だけで『Cl-(塩化物イオン)』という状態の方が居心地がいいんです。
そういう状態で無理やりチームを組まされていると……そう、どこかで仲違いを起こします(笑)
次亜塩素酸の場合、『OH』と『Cl』になるかと思いきや、ここは化学の世界。電子が関与してくるんですね。
電子とは、原子や分子がバランスを保つために持っている大事なものです。
※電子は数字で表すと「-1」と、マイナスの存在です。奪うほどマイナスが増え、奪われるほどプラスが増える、少しややこしい存在です。
『HClO』というように、マイナスもプラスも書いていない分子では、原子同士が電子をシェアし合って、ちょうどいい数に保たれています。
しかし、ひとたび仲違いをすると『OH-』と、OHに電子を奪われてしまいましたね。
分子の世界もまた社会の縮図……奪う者がいれば、奪われる者がいるのです。
次亜塩素酸においては、奪われる者は塩素原子でした。
塩素原子は、そもそも電子を一つ余分に持っている状態『Cl-(塩化物イオン)』が居心地がいいのに、あろうことか電子を余分に持っていない状態から、電子を一つ奪われてしまいます。
この『Cl+』の状態を『塩素ラジカル』といいます。
困った塩素ラジカルはどうするかというと、自分がされたのと同じように、他の者から電子を奪おうとするのです。
その相手は、ウイルスだったり細菌だったり、汚れ(有機物)だったり……そして、電子は先ほどもお伝えした通り、原子や分子がバランスを保つために重要なものなので、電子を奪われたウイルスや細菌はひとたまりもありません。ダメージが溜まれば、不活化していくことになります。
これが、次亜塩素酸が持つ除菌効果のメカニズムなのです。
そして、周囲のありとあらゆるものから電子を奪い、目的の塩化物イオンになった塩素原子は気分が落ち着き、周りの物質から電子を奪うことはなくなります。
たとえ、周りにどれだけウイルスや細菌など、電子を奪える者がいても、です。
以上が、次亜塩素酸ひいては次亜塩素酸水の、除菌効果とその効果が失われるまでのメカニズムです。
なかなか慌ただしい仕組みでしたね。
塩素原子の『電子の飢え』を利用したメカニズムだからこそ、ウイルス以外のものに対しても猛烈に反応します。
そして、自分が電子を得終えたら、その反応性の高さは失われてしまうのです。
- 何にでも反応する
- 反応を終えたらうんともすんとも言わない
これが、次亜塩素酸水の『不安定性』の背景です。この不安定性は、ウイルスに対して高い効果を発揮するとともに、先述の検証結果のムラと、最終的にNITEから提示された条件の細かさにつながったのです。
反応性の高さが、メリットにもなるしデメリットにもなるんだな。
正しい次亜塩素酸水の使い方
次亜塩素酸水は、これまでお伝えしてきたように、高い反応性を持っています。
その反応性だけ見れば、他の除菌剤や消毒薬にひけをとりません。むしろ、その能力が上回ることも多いでしょう。
その能力を除菌のために発揮させるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 生成後の長時間の放置厳禁(多少の不純物でも反応が進んでしまいます)
- 日光厳禁(光分解されます)
- 有効塩素濃度の管理の徹底(粉から作る場合100ppm、それ以外は35ppm以上)
- 有機物の混入厳禁(爆発的に反応が進んでしまいます)
- 少量では十分な効果がないと考える(除菌しきる前に電子が足りてしまいます)
これらをクリアするために、『次亜塩素酸水を作るとき』『保管するとき』『使用するとき』の3つの観点で、具体的なポイントをお伝えします。
次亜塩素酸水を作るときのポイント
①指定の有効塩素濃度を守る
NITEが推奨した濃度は2通りでした。
▼ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
塩のような粉を水に溶かして作るタイプの製品の原材料です。
保存のききやすい形状で、生成機も必要ないので、一般人でも入手しやすく手も出しやすい製品です。
これは、有効塩素濃度が100ppm以上になるように作ります。
▼それ以外の生成方法
電気分解で作ったり、イオン交換膜を利用して作るので、機械が必要なことがほとんどです。そのため、一般の方がつくる機会はなさそうですが、こちらは有効塩素濃度が35ppm以上になるように作ります。
②有機物が混ざらないようにする。
唾や飛沫が混ざらないようにマスクを着用したり、手あかや皮脂が混ざらないように手袋を着用するといいでしょう。
また、次亜塩素酸水を作る容器にも、汚れやゴミがついていないか確認してkづ浅井。
次亜塩素酸水を保管するときのポイント
①光を避ける
遮光容器を使ったり、日の当たる場所を避けるなど、気を使いましょう。
②保管期限の管理を徹底する
製品の説明欄に保管期限の定めがあると思います。
時間経過に伴って有効塩素濃度が落ちるのが理由なので、期限は必ず守るようにして下さい。
※期限が明記されていない製品は、避けた方が無難です。
次亜塩素酸水を使用するときのポイント
①有機物を避ける
ウイルスをやっつけてくれる前に飢えた塩素ラジカルがいなくなってしまうのを避けるためでしたね。
モノに使う時には、有機物をあらかじめ除去してから使用しましょう。
手指消毒に使う時には、有機物の除去が難しいのでとにかく大量に使いましょう。
スプレーでは何プッシュ使っても不足します。手洗い時の水くらいの量を使うべきです。
※つまり、手指消毒にはやっぱり不向きなんですよね。
②少量では効果がないと考えておく
有機物の完全な除去って難しいです。また、次亜塩素酸水を吹きかけた先の材質とも反応します。
そのため、次亜塩素酸水は大量に使用し、ウイルスをやっつけてくれる塩素ラジカルの量を十分な状態にしましょう。
次亜塩素酸水 NGな使い方
最後に、新型コロナウイルス対策における、NGな使い方についてもお伝えします。
- スプレーボトルに入れて、手指消毒に使う(有効な量が担保できないため)
- 空間除菌を目的に空間に噴霧する(第三者の出したエビデンスがないです)
- ドアノブ等の除菌のために少量だけ使う(量多めに使うのは◎)
こんなところでしょうか……正直、どれもまだまだ街中で見かけるものですよね。
空間噴霧以外は、百害も一利もないのでいいのですが、空間噴霧だけは、健康被害の可能性もあります(これは、次亜塩素酸水に限らずですけどね)。
ふらっと立ち寄ったお店で噴霧していた……くらいならば問題はありませんが、気管支や粘膜が弱い自覚のある方は、なるべく噴霧器から距離をとっておいた方が良いでしょう。
いかがでしたか?
一部からは、眉を顰められる存在になってしまった『次亜塩素酸水』ですが、本当のところは、用法用量を守って正しく使えば、頼もしい味方になってくれる除菌剤なんだよ、ということが、お判りいただけたでしょうか?
とはいえ、ご家庭で、しかも確実性を少しでも上げたい新型コロナ対策として使うには、条件が多すぎて面倒くさいですよね。
NITEでは、洗剤に含まれる界面活性剤についても検証をしていて、効果が確認されたものも多数出ています。
また、今では流通が落ち着いてきて、エタノールも手に入りやすくなりました。
そのため、かしこく確実にコロナ対策グッズを選ぶという視点では、次亜塩素酸水は一般家庭では選択肢には入らない存在になりつつあるのかもしれませんね。
飛び交う情報が玉石混交の中、自分の家族の身を守っていく必要があるコロナ禍。
この記事が、あなたの正しい選択の一助になれば嬉しいです♪